「専業主婦はどんなに忙しくても評価されることはほとんどありません。でも仕事の場合は、お給料や労いの言葉をいただけるのでやりがいを感じますね。お客さまから『ありがとう』『おいしかったよ』と直接声をかけていただけると、この仕事をしていてよかったなと実感します」

そう話すのは、焼肉セナラ大宮店でホールスタッフとして働く渋谷さん。家族連れで賑わう店内で次々と来るお客さんに爽やかな笑顔で対応をしている。以前はホームセンターで働いていたが、義母の入院を機に退職。3年間、義母の世話に専念していたが義母が退院したため、もう一度働くことを決意した。

「昼間は義母がデイケアに通うので、夕方から働ける仕事を探していました。ここなら家からも通いやすく仕事も楽しそうだなと思い応募したんです」

とはいえ、3年間のブランクに加え、飲食店で働くのは20年ぶり。不安は大きかったと話す。

「仕事が覚えられるのか、体力がもつのかとても不安でした。働き始めた当初は、料理名を覚えるのもひと苦労でしたし、ギックリ腰を患ってしまったこともありました」

そんな危機を救ってくれたのは、一緒に働く仲間だったそう。コルセットを巻いていた渋谷さんを気遣い、学生アルバイトの方が腰に負担のかかる座敷の担当を変わってくれたのだとか。

「その気遣いは本当にうれしかったですね。夕方のシフトは、若いスタッフが多いんですが、みんな優しい子ばかりで本当に働きやすい職場です。すぐに打ち解けることができて、休憩時間は学校の話を聞かせてくれるなど楽しいですよ」

そんな渋谷さんは、ここで働くようになってから自分の中である変化があったという。

「接客業なので常に笑顔を意識していますし、この仕事が楽しいので自然と笑顔が増えたと思います。おかげで夫や子どもへの小言が減って、家庭でも笑っている時間が多くなったと思いますよ」

今は専業主婦をしていた時には得られなかった充実感があるのだと、渋谷さんは笑顔で話してくれた。